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2025.07.10コラム
看取りケアとは?|意味・場所・費用・相談先までわかりやすく解説
「看取りケア」という言葉を聞いたことはありますか?
人生の最期をどのように迎えるか、誰しもが考えるテーマです。大切な人が、住み慣れた場所で、穏やかに最期を迎えられるように、そして、残された家族が後悔なく見送れるように、看取りケアについて正しい知識を身につけましょう。この記事では、看取りケアとは何か、費用、受けられる場所、相談先、自宅での看取りケアについて、分かりやすく解説します。
看取りケアとは?
「看取りケア」とは、人生の終末期にある方々が、尊厳を保ちながら、安らかに最期を迎えられるように支援するケアのことです。単に医療的な処置を行うだけでなく、身体的、精神的、そしてスピリチュアルな側面を包括的に支えることを目指します。この記事では、看取りケアの定義から、その内容、費用、受けられる場所、そして自宅での看取りケアについてまで、幅広く解説していきます。
看取りケアの定義と目的
看取りケアの定義は、「回復の見込みがないと判断された人が、最期までその人らしく生きられるように支援すること」です。その目的は、苦痛を和らげ、身体的・精神的な安寧を保ち、残された時間を充実して過ごせるようにすることにあります。また、ご本人のみならず、ご家族の精神的なサポートも重要な役割です。看取りケアは、ご本人とご家族が、最期の時を穏やかに、そして後悔なく過ごせるように支えることを目指しています。
看取りケアの内容:身体的ケア、精神的ケア、スピリチュアルケア
看取りケアは、多角的なアプローチで支援します。具体的には、以下の3つのケアが重要です。
- 身体的ケア: 痛みや呼吸困難などの身体的な苦痛を緩和するための処置を行います。食事のサポート、清潔保持、体位変換なども含まれます。
- 精神的ケア: 不安や孤独感といった精神的な苦痛を和らげるために、傾聴や共感を通して心のケアを行います。ご本人の思いを尊重し、寄り添うことが大切です。
- スピリチュアルケア: 人生の意味や価値観、宗教観など、精神的な支えとなるものを尊重し、心の平穏を保つためのケアを行います。ご本人の価値観を理解し、その人らしい生き方を支えます。
これらのケアを組み合わせることで、QOL(Quality of Life:生活の質)を最大限に高め、最期の時までその人らしく生きることを支援します。
看取りケアを受ける場所
病院での看取りケア
病院での看取りケアは、医療的なサポートが充実している点が最大のメリットです。24時間体制で医師や看護師が対応し、容態の変化にも迅速に対応できます。病状の急変時や、高度な医療処置が必要な場合には、最適な環境と言えるでしょう。また、病院によっては、緩和ケア病棟を設けているところもあり、痛みや苦痛の緩和に特化したケアを受けることも可能です。しかし、病院での看取りは、自宅や施設に比べて、生活空間が限られる、面会時間に制限がある、といったデメリットもあります。病院の設備や人員体制によって、看取りケアの質に差があることも考慮する必要があります。
介護施設での看取りケア
介護施設での看取りケアは、生活の場としての側面と、ある程度の医療ケアを両立できる点が特徴です。看護師が常駐している施設が多く、医療的な処置や服薬管理も行われます。日々の生活の中で、食事や入浴などの介護サービスを受けながら、安心して過ごすことができます。施設によっては、看取りケアに力を入れており、ターミナルケアの専門知識を持ったスタッフが、精神的なケアにも対応しています。ただし、介護施設によって、医療体制や看取りケアの質にばらつきがあるため、事前に情報収集し、施設の見学などを通して、自分に合った施設を選ぶことが重要です。また、個室の有無や、家族の面会時間なども確認しておきましょう。
自宅での看取りケア
自宅での看取りケアは、住み慣れた環境で、家族と最期の時を過ごせるという点が、大きなメリットです。本人の希望を尊重し、可能な限り、今まで通りの生活を続けることができます。家族は一緒に時間を過ごし、最期まで寄り添うことができます。しかし、自宅での看取りケアは、家族の負担が大きいという側面もあります。医療的な処置や、介護が必要な場合、24時間体制でのサポートが必要となり、家族の精神的、肉体的な負担は計り知れません。また、医療的な知識や技術も必要となるため、訪問看護師などの専門家のサポートが不可欠です。自宅での看取りケアを検討する際には、家族だけで抱え込まず、地域の医療・介護サービスを積極的に利用し、専門家と連携することが大切です。
看取りケアにかかる費用
費用の内訳
看取りケアにかかる費用は、看取りケアを提供する場所やサービス内容によって大きく異なります。具体的には、医療費、介護サービス費、食費、居住費などが含まれます。病院での看取りケアでは、入院費や治療費、看護師によるケア費用がかかります。介護施設での看取りケアでは、施設利用料や介護サービス費、食費などが主な費用となります。自宅での看取りケアでは、訪問看護や訪問介護などのサービス利用料、医療費、そして、必要に応じて介護用品の購入費用などがかかります。これらの費用は、ご本人の病状や必要なケアの内容によって変動するため、事前にしっかりと確認することが重要です。
費用を抑える方法
看取りケアにかかる費用を抑えるためには、いくつかの方法があります。まず、公的保険制度や補助金制度の活用を検討しましょう。介護保険は、介護サービス費の自己負担を軽減してくれます。高額療養費制度は、医療費の自己負担額を一定額に抑えることができます。また、自治体によっては、低所得者向けの医療費助成制度や、介護保険サービスの利用料を軽減する制度を設けている場合があります。これらの制度を利用することで、費用負担を大幅に減らすことが可能です。次に、複数のサービスを比較検討することも重要です。訪問看護ステーションや介護施設のサービス内容や費用は、それぞれ異なります。複数の事業者のサービス内容を比較検討し、ご自身の状況に合った、費用対効果の高いサービスを選ぶことが大切です。さらに、不要なサービスを省くことも、費用を抑える上で有効です。必要なサービスと、そうでないサービスを区別し、本当に必要なサービスのみを利用することで、費用を抑えることができます。
看取りケアの相談先
医療機関
看取りケアに関する相談は、まず医療機関に相談するのが良いでしょう。かかりつけ医がいれば、これまでの病状や治療経過を把握しているため、安心して相談できます。また、地域の医療機関を紹介してもらうことも可能です。病院によっては、緩和ケア内科や在宅医療科などの専門の部署を設けており、専門的なアドバイスを受けることができます。相談する際には、ご本人の状態や希望、家族の意向などを具体的に伝えましょう。その上で、今後の治療方針やケアプランについて、一緒に考えていくことが重要です。
ケアマネジャー
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険に関する専門家であり、介護サービスを利用する際の相談窓口となります。看取りケアについても、豊富な知識と経験を持っているケアマネジャーが多く、様々な相談に乗ってくれます。ケアマネジャーは、ご本人の状態や家族の状況に合わせて、適切な介護サービスや医療機関を紹介してくれます。また、ケアプランの作成や、サービス事業者との調整なども行います。自宅での看取りを希望する場合は、訪問看護ステーションや訪問介護ステーションなどと連携し、24時間体制のサポート体制を整えることも可能です。ケアマネジャーに相談する際には、看取りケアに関する希望や、不安に感じていることなどを伝えて、一緒に解決策を探していくことが大切です。
相談窓口
看取りケアに関する相談窓口は、医療機関やケアマネジャー以外にも、様々な場所に設置されています。例えば、地域包括支援センターは、高齢者の総合相談窓口として、介護や福祉に関する様々な相談に対応しています。ここでは、看取りケアに関する情報提供や、関係機関との連携などを行っています。また、各市区町村の役所や保健所でも、看取りケアに関する相談を受け付けている場合があります。これらの窓口では、地域の医療・介護サービスに関する情報や、各種制度に関する情報を提供しています。さらに、NPO法人や民間企業などが運営する相談窓口もあり、専門的な知識を持った相談員が、個別相談に応じてくれます。相談窓口を利用する際には、事前に電話などで予約をしておくと、スムーズに相談を進めることができます。
看取りケアの流れ
看取りケアは、ご本人とご家族が穏やかな時間を過ごし、最期を後悔なく迎えるために、重要なプロセスです。ここでは、看取りケアの流れを、事前の準備、看取り期の過ごし方、死後の手続きの3つの段階に分けて解説します。
事前の準備
看取りケアを始めるにあたって、まず大切なのは、ご本人とご家族が、看取りケアについて話し合うことです。ご本人の意思を確認し、どのような場所で、どのようなケアを受けたいのかを共有しましょう。その上で、医療機関やケアマネジャーと相談し、今後のケアプランを立てます。具体的には、訪問看護や訪問介護などのサービスの利用、自宅での看取りに必要な医療機器の準備、緊急時の連絡体制などを検討します。また、リビングウィル(生前遺言)を作成し、延命治療や尊厳死に関する意思を明確にしておくことも重要です。金銭的な準備も必要です。介護保険や医療保険の利用、葬儀費用の準備など、事前に必要な費用を確認し、準備をしておきましょう。
看取り期の過ごし方
看取り期に入ったら、ご本人の身体的・精神的な苦痛を和らげるためのケアが中心となります。痛みや呼吸困難などの症状を緩和するための医療的な処置を行い、必要に応じて、酸素吸入や点滴を行います。また、ご本人の安楽な姿勢を保ち、清潔を保つためのケアも重要です。精神的なケアとしては、ご本人の話をよく聞き、不安や孤独感に寄り添います。家族は、ご本人と一緒に過ごす時間を大切にし、感謝の気持ちを伝えましょう。思い出話や、好きな音楽を聴くなど、ご本人が穏やかな気持ちで過ごせるような工夫をしましょう。看取り期は、ご本人にとっても、ご家族にとっても、特別な時間です。後悔のないように、ご本人の意思を尊重し、寄り添うことが大切です。
死後の手続き
ご本人が亡くなった後には、様々な手続きが必要となります。まず、医師から死亡診断書を受け取り、死亡届を役所に提出します。死亡届の提出後、火葬許可証が発行されます。葬儀の日程を決め、葬儀社と打ち合わせを行いましょう。葬儀後には、遺品整理や、相続の手続きも必要となります。これらの手続きは、故人の逝去後、速やかに行う必要があります。手続きには、多くの書類や手続きが必要となるため、事前に必要なものを確認し、準備しておくとスムーズに進めることができます。また、悲しみに暮れる中で、これらの手続きを行うことは大変ですが、周囲のサポートを受けながら、一つ一つ丁寧に進めていきましょう。
自宅での看取りケア
自宅での看取りケアの準備
自宅で看取りケアを行うためには、事前の準備が不可欠です。まずは、ご本人の状態を正確に把握し、かかりつけ医や訪問看護師と連携して、必要な医療処置や介護の内容を決定します。具体的には、点滴や酸素吸入などの医療機器の準備、褥瘡(床ずれ)予防のための体位変換の方法、食事の形態や栄養管理などについて、専門家からのアドバイスを受けましょう。また、緊急時の連絡体制を整え、24時間対応できる医療機関や訪問看護ステーションと連携しておくことも重要です。さらに、介護保険や医療保険などの制度を活用し、費用負担を軽減するための手続きも行っておきましょう。ご本人が安心して過ごせるように、住環境を整えることも大切です。段差をなくしたり、手すりを設置するなど、安全に配慮した環境づくりを心がけましょう。そして、何よりも大切なのは、ご本人の意思を尊重し、その人らしい生活をサポートすることです。
自宅での看取りケアの注意点
自宅での看取りケアは、ご本人とご家族にとって、かけがえのない時間となる一方で、注意すべき点も多くあります。まず、家族だけで抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用することが重要です。訪問看護師や訪問介護ヘルパーなど、専門的な知識と技術を持った人々の協力を得ることで、ご本人の身体的・精神的な負担を軽減し、安心して過ごせる環境を整えることができます。また、24時間体制でのサポートが必要となるため、家族の負担も大きくなる可能性があります。無理のない範囲で、役割分担を決め、休息時間を確保することも大切です。精神的なケアも重要です。ご本人の不安や孤独感に寄り添い、話をよく聞き、心のケアを行いましょう。看取りケアは、ご家族にとっても、精神的な負担が大きいものです。必要に応じて、カウンセリングや相談窓口を利用し、心のケアを行うことも検討しましょう。自宅での看取りケアは、ご本人とご家族が、最期の時を穏やかに過ごせるための選択肢の一つです。しかし、その準備と注意点について、しっかりと理解し、専門家と連携しながら、最適なケアを提供することが大切です。
看取りケアと緩和ケアの違い
看取りケアと緩和ケアの違い
看取りケアと緩和ケアは、どちらも終末期にある患者とその家族を支えるための重要なケアですが、その目的と内容には違いがあります。混同されやすいこの2つのケアの違いを理解し、ご自身の状況に合った適切なケアを選択できるようにしましょう。
緩和ケアの目的と内容
緩和ケアは、生命を脅かす病気を持つ患者のQOL(生活の質)を向上させることを目的としています。具体的には、身体的な苦痛(痛み、呼吸困難など)や精神的な苦痛(不安、抑うつなど)を和らげることに焦点を当てています。また、患者さんの家族も対象となり、グリーフケア(悲嘆ケア)なども行われます。緩和ケアは、病気の進行度に関わらず、診断されたときから提供され、治療と並行して行われることもあります。
看取りケアの目的と内容
一方、看取りケアは、回復の見込みがないと判断された患者が、最期までその人らしく生きられるように支援することを目的としています。身体的、精神的、スピリチュアルな側面を総合的に支え、患者さんの苦痛を和らげ、安らかな最期を迎えられるようにサポートします。看取りケアは、一般的に終末期に特化しており、終末期医療やターミナルケアとも呼ばれます。患者さんの尊厳を守り、家族が後悔なく見送れるように、多職種連携でケアを提供します。
緩和ケアと看取りケアの違い
緩和ケアと看取りケアの主な違いを表にまとめました。
項目 | 緩和ケア | 看取りケア |
---|---|---|
目的 | QOLの向上 | その人らしい最期を支援 |
対象 | 生命を脅かす病気を持つ患者とその家族 | 回復の見込みがないと判断された患者とその家族 |
時期 | 診断時から | 終末期 |
主な内容 | 身体的・精神的苦痛の緩和、グリーフケア | 身体的・精神的・スピリチュアルなケア、家族への支援 |
治療との関係 | 並行して行われる | 治療は行われない、または中止される |
どちらのケアが必要か?
どちらのケアが必要かは、ご本人の病状や置かれている状況によって異なります。もし、病気の治療と並行して、身体的・精神的な苦痛を和らげたい場合は、緩和ケアが適しています。回復の見込みがなく、最期をどのように迎えたいか、家族とどのように過ごしたいかを重視する場合は、看取りケアが適しています。どちらのケアを受けるべきか迷う場合は、医師や看護師、ケアマネジャーなどの専門家に相談し、ご自身の状況に合ったケアを選択しましょう。
まとめ
看取りケアは、人生の終末期にある人々が、尊厳を保ちながら安らかに最期を迎えられるように支援するケアです。身体的、精神的、スピリチュアルな側面を包括的に支え、ご本人のQOL(生活の質)を最大限に高めることを目指します。
看取りケアを受けられる場所は、病院、介護施設、自宅などがあります。病院では医療的なサポートが充実し、介護施設では生活の場と医療ケアを両立できます。自宅では、住み慣れた環境で家族と最期を過ごせますが、家族の負担も大きくなる可能性があります。
看取りケアにかかる費用は、提供場所やサービス内容によって異なり、医療費、介護サービス費、食費、居住費などが含まれます。費用を抑えるためには、公的保険制度や補助金制度の活用、複数のサービスの比較検討、不要なサービスの削減などが有効です。
看取りケアに関する相談先としては、医療機関、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどがあります。
看取りケアの流れは、事前の準備、看取り期の過ごし方、死後の手続きの3つの段階に分けられます。事前の準備では、ご本人と家族が看取りケアについて話し合い、ケアプランを立てることが重要です。看取り期には、ご本人の苦痛を和らげるためのケアが中心となり、家族はご本人と一緒に過ごす時間を大切にします。死後の手続きでは、死亡診断書の手続きや葬儀の手配などを行います。
自宅での看取りケアでは、事前の準備が不可欠であり、専門家のサポートと家族の協力が重要です。
看取りケアを選択するということは非常に覚悟のいる選択と言えるでしょう。後に後悔をしないためにも、「自分はどのような医療を受けたいのか、又は受けたくないのか」「どのように人生の最期を迎えたいと思っているのか」などを、健康であるうちに話をし、希望が尊重され、実現されることが大切です。