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2025.11.24コラム

認知症の種類を分かりやすく!症状・原因・診断・治療を解説

認知症の種類を分かりやすく!症状・原因・診断・治療を解説

「最近、物忘れが多くなった気がする…」「親の様子がおかしいけど、もしかして認知症?」

認知症は、誰にとっても他人事ではありません。しかし、認知症と一口に言っても、その種類や症状はさまざまです。

この記事では、認知症の種類を分かりやすく解説し、それぞれの特徴や原因、初期症状、診断方法、治療法について詳しくご紹介します。認知症について正しく理解し、あなた自身や大切な人のために、今できることを一緒に考えていきましょう。

認知症とは?

「認知症」と聞くと、なんだか怖いイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、認知症について正しく理解することで、不安が和らぎ、より穏やかな気持ちで向き合えるようになります。ここでは、認知症がどのような状態なのか、その定義や概要、そして私たちの社会にとってなぜ大切なのかについて、丁寧にお話ししていきます。

認知症は、脳の機能が低下することで、記憶力や判断力、言語能力といった「認知機能」が損なわれ、それによって日常生活を送ることが難しくなる状態を指します。単なる「物忘れ」とは異なり、例えば、昨日あったことを思い出せない、日時や場所が分からなくなる、慣れた道で迷ってしまう、といったことが起こりやすくなります。これは、脳の病気や加齢などが原因で、脳の神経細胞の働きが悪くなったり、数が減ったりすることによって起こるのです。

高齢化が進む現代社会において、認知症は決して他人事ではありません。多くの方が関わる可能性のある状態だからこそ、私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、理解を深めていくことが、ご本人だけでなく、ご家族や地域社会全体にとっても、より良い未来を築くために非常に重要になってきます。

認知症の定義と概要

認知症の基本的な定義は、先ほども少し触れましたが、脳の病気や障害などによって、記憶力、思考力、判断力、言語能力といった「認知機能」が低下し、それまで普通にできていた日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態のことを指します。この認知機能の低下は、一時的なものではなく、一般的に回復が難しい場合が多いとされています。

認知症は、単に物忘れがひどくなるということだけではありません。例えば、時間や場所が分からなくなる「見当識障害」、慣れた場所でも道に迷ってしまう「失行」、意欲が低下して何もする気になれなくなる「無気力」、感情のコントロールが難しくなる「情動障害」など、様々な症状が現れることがあります。これらの症状は、原因となる病気によって現れ方が異なり、進行のスピードも人それぞれです。大切なのは、これらの変化に気づき、早期に専門家へ相談することです。

認知症の種類:主な4つのタイプ

認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状、進行の仕方が異なります。この記事では、認知症の主要な4つのタイプ、すなわちアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、そして前頭側頭型認知症に焦点を当て、それぞれの特徴を詳しく解説します。これらのタイプは、発症のメカニズム、初期および進行期の症状、診断に至るまでのプロセス、そして治療法において顕著な違いが見られます。

各タイプの違いをより明確に理解していただくために、以下の比較表を作成しました。この表では、原因、主な症状(初期・進行)、診断のポイント、治療法の概略をまとめています。専門医へのインタビューを通じて得られた最新の情報や、診断・治療における重要なポイントも随時紹介していきます。

主な認知症4タイプの比較

特徴 アルツハイマー型 レビー小体型 血管性 前頭側頭型
原因 脳内にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が減少・変性する。 脳の神経細胞にレビー小体(αシヌクレインというたんぱく質が集まったもの)が出現し、神経伝達物質の減少などを引き起こす。 脳梗塞や脳出血などの脳血管障害により、脳の組織が損傷し、神経細胞が失われる。 脳の前頭葉や側頭葉の神経細胞が進行性に減少し、変性する。原因はまだ特定されていない部分が多い。
主な症状(初期) 記憶障害(新しいことを覚えられない)、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)。 幻視(実際にはないものが見える)、パーキンソン症状(手足の震え、動作が遅くなる)、レム睡眠行動異常(寝言や寝ている間に体を動かす)。 認知機能の低下(判断力、意欲の低下など)に加え、脳梗塞の部位に応じた症状(麻痺、言語障害など)が現れることがある。 性格変化(無関心、感情の平板化、脱抑制、不潔行為など)、行動異常(徘徊、多動、常同行動など)、言語障害(意味が通じない言葉を話す、言葉が出にくい)。
主な症状(進行) 症状が全体的に進行し、理解力・判断力・言語能力の低下、遂行機能障害、最終的には日常生活全般に介助が必要となる。 幻視やパーキンソン症状が悪化し、自律神経症状(便秘、立ちくらみ、頻尿など)や認知機能の変動(意識がはっきりしたり、ぼんやりしたりを繰り返す)が顕著になる。 脳血管障害の再発により、症状が段階的に悪化したり、まだら状に認知機能が低下していく。 症状が進行し、社会生活への適応が困難になり、介護者の負担が増大する。
診断のポイント 記憶障害が中心。画像検査(MRIなど)で脳萎縮、脳脊髄液検査やPET検査でアミロイドβの蓄積を確認。 幻視、パーキンソン症状、認知機能の変動、レム睡眠行動異常などの組み合わせ。SPECT検査などで血流低下パターンを確認。 脳血管障害の既往や、症状の段階性・まだら状進行の有無。画像検査(MRIなど)で脳梗塞や脳出血の痕跡を確認。 性格変化や行動異常が先行・顕著。画像検査(MRIなど)で前頭葉・側頭葉の萎縮を確認。
治療法の概略 薬物療法(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬など)で進行を遅らせる。非薬物療法(リハビリテーション、環境調整など)も重要。 薬物療法(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、パーキンソン病治療薬など)。幻視に対しては、抗精神病薬の使用には注意が必要。 脳血管障害の再発予防(血圧管理、抗血小板薬など)。認知機能低下に対する薬物療法やリハビリテーション。 根本的な治療法は確立されていない。症状に応じた対症療法(精神科的治療、行動療法など)や、介護・環境調整が中心。

アルツハイマー型認知症

認知症の種類の中で最も多く見られるのが、アルツハイマー型認知症です。このタイプは、脳内にアミロイドβやタウといった異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が徐々にダメージを受けていくことで発症すると考えられています。初期症状としては、物忘れ、特に新しい出来事を記憶することが難しくなる「近時記憶障害」が特徴的です。さらに、時間や場所が分からなくなる見当識障害なども現れます。病状が進行すると、理解力や判断力、言語能力の低下、遂行機能障害(計画を立てて実行することが難しくなる)などが顕著になり、日常生活を送る上で介助が必要な場面が増えていきます。

診断においては、記憶障害が中心であること、画像検査(MRIなど)で脳の萎縮(特に海馬周辺)が見られること、そして脳脊髄液検査やPET検査でアミロイドβの蓄積を確認することが重要視されます。治療法としては、病気の進行を遅らせることを目的とした薬物療法(アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬など)が中心となりますが、リハビリテーションや生活環境の調整といった非薬物療法も、本人のQOL(生活の質)を維持するために非常に大切です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型に次いで多いとされる認知症です。このタイプの最大の特徴は、脳の神経細胞に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質(αシヌクレインが集まったもの)が出現し、神経伝達物質のバランスを崩すことで症状が現れる点です。初期症状として、実際には存在しないものが見える「幻視」、手足の震えや動作が遅くなる「パーキンソン症状」、そして睡眠中に大声を出したり、手足を動かしたりする「レム睡眠行動異常」がみられることがあります。

また、認知機能は日によって変動し、意識がはっきりしている時とぼんやりしている時を繰り返すことも特徴的です。病状が進行すると、これらの症状が悪化するだけでなく、便秘、立ちくらみ、頻尿といった自律神経症状も現れやすくなります。診断では、これらの特徴的な症状の組み合わせや、SPECT検査などで脳の血流低下パターンを確認することが手がかりとなります。治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬による認知機能の改善や、パーキンソン症状に対する治療薬が用いられますが、幻視に対して抗精神病薬を使用する際は、過敏に反応する可能性があるため慎重な投与が必要です。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が原因で起こる認知症です。脳の血管が詰まったり破れたりすることで、その先の脳組織にダメージが及び、神経細胞が失われることで発症します。このタイプの認知症では、脳血管障害が起きた部位によって症状が異なり、例えば手足の麻痺や言語障害といった、いわゆる「脳卒中」の症状が伴うことがあります。認知機能の低下は、脳血管障害が起きたタイミングで段階的に現れたり、まだら状に進行したりするのが特徴です。

つまり、ある日突然、認知機能が低下したと感じたり、一度改善しても、新たな脳血管障害が起きると再び低下するという経過をたどることがあります。診断においては、脳血管障害の既往(過去の病歴)や、症状の段階的な進行・まだら状の進行といった特徴、そしてMRIなどの画像検査で脳梗塞や脳出血の痕跡を確認することが重要です。治療の基本は、脳血管障害の再発予防(血圧管理、血糖管理、コレステロール管理、禁煙、抗血小板薬など)です。認知機能の低下に対しては、薬物療法やリハビリテーションが行われます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、他の認知症とは異なり、記憶障害よりもむしろ、性格や行動の変化が目立つことが特徴です。このタイプは、脳の前頭葉や側頭葉といった、人格や行動、言語などを司る部位の神経細胞が進行性に減少・変性することで起こります。原因については、まだ不明な点が多いのですが、一部には遺伝的な要因が関与していることも知られています。初期症状としては、以前とは別人になったかのように、感情の起伏が乏しくなったり(感情の平板化)、周囲への配慮がなくなり、衝動的な言動が増えたり(脱抑制)、身だしなみに無頓着になったり(不潔行為)、あるいは逆に無気力になったりといった性格変化や行動異常が顕著に現れます。

また、言葉を理解したり話したりすることに困難が生じる場合もあります。病状が進行すると、これらの変化はさらに顕著になり、社会生活への適応が難しくなり、介護する側の負担が増大することが少なくありません。診断では、性格や行動の変化が先行・顕著であること、そしてMRIなどの画像検査で前頭葉や側頭葉の萎縮を確認することが手がかりとなります。現時点では根本的な治療法は確立されていませんが、症状に応じた対症療法(精神科的治療や行動療法など)や、患者さんの安全を確保し、精神的な安定を図るための介護や環境調整が中心となります。

その他の認知症

「認知症」と聞くと、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などがよく知られていますが、これら以外にも様々な種類の認知症が存在します。「その他の認知症」として、比較的まれであったり、特定の原因によって引き起こされたりするものを紹介します。これらの多様性について理解を深めることで、認知症への理解がさらに広がるでしょう。例えば、若年性認知症や、他の疾患に合併する認知症など、様々なケースがあることを知っておくことは重要です。

その他の認知症の種類

アルツハイマー型、レビー小体型、血管性、前頭側頭型以外の、あまり知られていない認知症の種類についても触れていきましょう。

  • 若年性認知症: 65歳未満で発症する認知症を指します。原因はアルツハイマー病など様々ですが、働き盛りの年代で発症するため、本人や家族への影響が大きいのが特徴です。
  • アルコール性認知症: 長期間にわたる過度の飲酒が原因で脳が損傷し、認知機能が低下する状態です。適切な治療と禁酒により、改善が見られる場合もあります。
  • 感染症による認知症: HIV感染やクロイツフェルト・ヤコブ病などの感染症が原因で引き起こされる認知症です。これらの感染症は脳に直接的なダメージを与えることがあります。
  • その他: 上記以外にも、甲状腺機能低下症やビタミン欠乏症などの身体疾患が原因で一時的または永続的な認知機能の低下が見られる場合や、脳腫瘍、頭部外傷などが原因となる場合もあります。これらの「その他の認知症」は、原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。

認知症の初期症状:早期発見のために

認知症の初期症状は、日常生活の中で注意深く観察することで、早期発見につながる大切なサインとなります。単なる「物忘れ」と片付けずに、その背景にある変化に気づくことが、ご本人やご家族にとって、より良い対応への第一歩となります。ここでは、認知症の初期に見られる様々な症状や兆候について、種類ごとの特徴や共通して見られるサインを具体的に解説し、早期発見の重要性についてお伝えします。これらのサインに気づくことで、適切なサポートや治療につなげることが可能になります。

見逃せない初期症状とその具体例

認知症の初期症状は、人によって現れ方が異なりますが、いくつかの共通したサインがあります。ここでは、具体的なエピソードを交えながら、見逃せない初期症状とその具体例を分かりやすく解説していきます。

  • 記憶障害(新しいことを覚えられない):
    • 今日あった出来事や、数時間前に話した内容を忘れてしまう。
    • 何度も同じ質問を繰り返す。
    • 物の置き場所を忘れ、探していることが多い(例:「鍵がどこにもない!」と慌てる)。
    • これは、単なる物忘れとは異なり、記憶が定着しないことが特徴です。
  • 判断力・理解力の低下:
    • 複雑な指示や手順を理解するのが難しくなる。
    • 状況に応じた適切な判断ができなくなる(例:季節外れの服装をする、火の始末を忘れる)。
    • 物事の優先順位をつけられなくなる。
  • 意欲・関心の低下:
    • 以前は楽しみにしていた趣味や活動に興味を示さなくなる。
    • 外出がおっくうになり、家に閉じこもりがちになる。
    • 身だしなみに無頓着になることがある。
  • 性格・行動の変化:
    • 些細なことで怒りっぽくなったり、疑い深くなったりする(例:家族がお金を盗んだと思い込む)。
    • 以前と比べて、おしゃべりが減ったり、無口になったりすることがある。
    • 感情の起伏が激しくなる、あるいは乏しくなる。
  • 時間や場所が分からなくなる:
    • 曜日や日付が分からなくなる。
    • 慣れた場所でも道に迷うことがある。
    • 自宅にいるのに、帰り道が分からなくなるといった混乱が見られる。

これらのサインは、ご本人にとっては非常につらく、不安なものです。周りの方がこれらの兆候に気づき、温かく寄り添うことが大切です。「気のせいかな」「少し疲れているだけかな」と様子を見るだけでなく、気になる変化があれば、専門機関に相談することも検討しましょう。早期のサインに気づくことが、適切な対応への第一歩となります。

認知症の診断方法

認知症の診断は、ご本人やご家族にとって大きな不安を伴うものです。ここでは、認知症と診断されるまでのプロセス、そして専門医が行う様々な検査について詳しく解説します。具体的には、問診、神経心理検査、画像検査、血液検査などが含まれます。これらの検査の目的や、診断に至るまでの流れを理解することで、皆様の不安を少しでも軽減できれば幸いです。また、専門医へのインタビューを通じて、認知症の診断における重要なポイントや最新の知見もご紹介していきます。確かな診断は、適切な治療やケアへの第一歩となります。

専門医による診断プロセス

認知症の診断は、まず専門医(神経内科医、精神科医、老年科医など)が担当します。受診から診断に至るまでには、いくつかの段階があります。初回は、ご本人やご家族からの詳しい問診が行われます。これまでの生活状況、自覚症状、物忘れの具体的なエピソードなどを丁寧にお伺いします。

次に、記憶力や判断力、言語能力などを評価する神経心理検査を実施します。さらに、脳の萎縮や血流、病変の有無などを調べる画像検査(MRIやCTスキャンなど)や、他の病気の可能性を除外するための血液検査なども必要に応じて行われます。これらの検査結果を総合的に評価し、専門医が最終的な診断を下します。結果の説明では、病状の理解を深めていただき、今後の見通しや対応策について丁寧に話し合います。

認知症の治療法

認知症の治療は、病気の進行を遅らせ、日常生活の質(QOL)を維持・向上させることを目指します。現在、認知症の根本的な治療法は確立されていませんが、薬物療法と非薬物療法を組み合わせることで、症状の緩和や進行の抑制が期待できます。ここでは、これらの治療法について詳しく解説し、それぞれの概要と期待できる効果についてご説明します。専門医へのインタビューを通じて、最新の治療法にも触れていきます。

薬物療法と非薬物療法の概要

認知症の治療には、主に薬物療法と非薬物療法の二つの柱があります。どちらか一方に偏るのではなく、患者さんの状態や認知症の種類に応じて、これらを適切に組み合わせることが重要です。薬による治療で進行を遅らせたり症状を和らげたりするとともに、薬に頼らない様々なアプローチで、患者さんの生活の質を高めていきます。

  • 薬物療法:
    • 進行抑制薬: アルツハイマー型認知症などに対して用いられ、脳内の神経伝達物質の働きを調整することで、認知機能の低下を緩やかにする効果が期待されます。例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などがあります。これらの薬は、病気の進行を完全に止めるものではありませんが、症状の進行を遅らせることで、より長くご自身の能力を保つ助けとなります。
    • 対症療法: 認知症に伴って現れる、うつ、不安、興奮、不眠、妄想、幻覚といった精神症状や行動・心理症状(BPSD)に対して、症状を和らげるために用いられます。これらの症状が軽減されることで、患者さんご自身はもちろん、ご家族の負担も軽減され、より穏やかな生活を送れるようになります。
  • 非薬物療法:
    • リハビリテーション: 運動療法、作業療法、言語療法などを通じて、身体機能や日常生活動作(ADL)の維持・向上を目指します。また、認知リハビリテーションでは、脳の活性化を促し、認知機能の低下を緩やかにする訓練を行います。身体を動かすこと、手先を使うこと、言葉を発することなどを通じて、生活への意欲を高めることも期待できます。
    • 回想法: 過去の経験や思い出を語り合うことで、記憶を呼び覚まし、自己肯定感を高め、意欲やコミュニケーション能力の向上を図ります。懐かしい写真や音楽などを活用することもあります。
    • 音楽療法: 音楽を聴いたり、歌ったり、楽器を演奏したりすることで、感情の安定、記憶の想起、コミュニケーションの促進などを目指します。馴染みのある音楽は、感情に強く働きかけ、穏やかな気持ちをもたらすことがあります。
    • その他の療法: 園芸療法、アニマルセラピー、学習療法など、患者さんの興味や関心に合わせた様々なアプローチがあります。これらは、生活に彩りを加え、精神的な安定や社会とのつながりを感じる助けとなります。

これらの治療法は、患者さん一人ひとりの病状、進行度、生活環境、そしてご本人の希望を考慮しながら、専門家チーム(医師、看護師、作業療法士、ケアマネジャーなど)によって総合的に計画・実施されます。認知症の治療は、単に病気を抑えるだけでなく、患者さんが尊厳を持って、できる限り自分らしく生きられることを支援することにあります。

認知症患者との接し方

認知症患者さんやそのご家族が日常生活で直面する課題や悩みに対し、具体的な接し方やコミュニケーションのヒントを提供します。特に、BPSD(行動・心理症状)への対応、患者さんの尊厳を守る関わり方、そしてご家族が抱える負担を軽減するためのサポート情報などを、家族へのインタビューを通じて、より実践的で共感的な内容でお届けします。このセクションでは、認知症患者さんとの日々の介護において役立つ情報を提供し、ご家族の皆様が安心して向き合えるようサポートいたします。

本人や家族のためのコミュニケーションとケア

認知症の方との日々の関わり方、コミュニケーションのコツ、そしてご家族が直面する課題への向き合い方について、具体的なヒントを以下にまとめました。

  • 日々のコミュニケーションのコツ
    • 穏やかな声で、ゆっくりと話しかけましょう。
    • 相手の目を見て、笑顔で接することが大切です。
    • 質問は一度に一つずつ、具体的に尋ねるように心がけましょう。
    • 相手のペースに合わせ、急かさないように配慮しましょう。
    • 過去の経験や思い出話に耳を傾け、共感を示すことで安心感を与えられます。
  • BPSD(行動・心理症状)への対応
    • 興奮や不安が見られる場合は、まずは落ち着ける環境を整えましょう。
    • 症状の原因を理解しようと努め、無理強いせず、受容的な態度で接することが重要です。
    • 穏やかな声かけや、心地よい音楽、軽い散歩などが効果的な場合があります。
    • ご家族だけで抱え込まず、専門家(医師、ケアマネジャーなど)に相談しましょう。
  • 患者さんの尊厳を守る関わり方
    • 一人の人間として尊重し、プライドを傷つけるような言動は避けましょう。
    • できることはご自身でしていただくよう促し、過剰な介助は控えましょう。
    • プライバシーに配慮し、衣服の着脱や入浴などは、できるだけ一人になれる時間を作りましょう。
    • 本人の意思を尊重し、選択肢がある場合は、本人が選べるようにサポートしましょう。
  • ご家族の負担軽減のために
    • 一人で抱え込まず、他の家族や友人、地域包括支援センターなどに相談しましょう。
    • 休息や気分転換の時間を意識的に作り、ご自身の心身の健康も大切にしましょう。
    • 認知症に関する正しい知識を身につけることで、不安が軽減されることがあります。
    • 介護サービス(デイサービス、ショートステイなど)を上手に活用しましょう。

まとめ:認知症の種類を知り、適切な対応を

この記事では、様々な認知症の種類、その症状、診断、治療法、そして大切な方への接し方について詳しく解説してまいりました。認知症は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる病気であることをご理解いただけたことと思います。認知症について正しく知ることは、ご本人だけでなく、ご家族や周囲の方々が安心して向き合うための第一歩となります。早期に認知症に気づき、適切な対応をとることは、進行を遅らせたり、症状を緩和したりする上で非常に大きなメリットがあります。もし、ご自身や身近な方に認知症かもしれないと感じることがあれば、一人で抱え込まず、専門機関にご相談ください。

 

         

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